2025年度 理事長所信
【はじめに】
ある先輩がこんな事を言っていました。「戦後復興を目的に設立された青年会議所はその社会的使命を終えたんだ。」しかし果たしてそうでしょうか。明るい豊かな社会は実現されたのでしょうか。私はそうは思いません。2024年に日本財団が実施した18歳意識調査では日本・アメリカ・イギリス・中国・韓国・インドの6カ国中、自国の将来について「良くなる」と答えた日本の若者は全体の15%、自身の将来について「夢を持っている」は60%といずれも6カ国の中で最も低い数字でした。若者が希望を持てない国、それが今の日本です。では誰がこの現状を変える事が出来るのか。どうやったら変える事が出来るのか。若者が接する身近な大人が輝いている姿を見せる事、夢や希望を語り続ける事、そんな瞬間の積み重ねが若者に希望を持たせる事だと私は信じています。では誰がそれをやるのか。社会課題を解決するリーダーの育成を使命とした我々、青年会議所のメンバーしかいない。私はそう信じています。
「至誠天に通ず」至誠とは極めて純粋な真心のことを言い、誠の心を尽くして行動すれば、いつかは必ず天に通じ認められるという意味です。私たちから、このまちから、社会を変えていきましょう。私たちなら出来る。
【ビジョンを持ったリーダーの育成】(会員開発)
現代は失われた30年と言われ高度経済成長期や安定成長期のような成長が見られない期間が続いています。更に先行きが不透明で、将来の予測が困難なVUCAの時代とも呼ばれ、私たちの目の前には濃い霧がかかっているのかもしれません。
そのような時代においては、どのようなリーダーが求められるのでしょうか。私は、これからの時代「ビジョン」を持ったリーダーが必要になってくると考えます。では、「ビジョン」とは何でしょうか。私が尊敬する多摩大学大学院名誉教授の田坂広志氏の言葉を借りれば、ビジョンとは、「視界」のことであり、これから「何が起こるのか」、そして「何をめざすのか」が見えているということです。
そこでまずは、ビジョンとは何か、なぜビジョンを持ったリーダーが求められるか、ビジョンを見出し、人々を導いていくにはどうすべきかを学び、意識を持つことから始めます。また、青年会議所という組織から学び、考え、実践していくことが有用です。私たちJCは、創立以来、ビジョンに基づき活動を行ってきた団体です。そのような、JCの歴史やJCの理念等を学び、深く思いを巡らせることは、JC活動の意欲を高めるだけでなく、会員一人一人にとっても有益です。そこで、日本青年会議所が策定したセミナーであるVMV(Vision Mission&Values)セミナーや新入会員セミナーを通じて、学びを深めていきます。
このような例会やセミナー、そして日々のJC活動を通じて、「友情・修練・奉仕」の3信条を胸に刻みつつ、夢を語り、切磋琢磨していくことで、我々厚木青年会議所の一人一人が明るいビジョンを持つ事が出来るようになり、そして、その一つ一つの光は共鳴し、やがて大きな光となり、この地域を照らしていきます。
【100 名LOM へ】(拡大)
私が厚木青年会議所に入会した 2014年、100名を超える会員数がおり、そこにはカッコいい後姿が沢山ありました。その一人一人のカッコいい後姿を追って、今の私があると言っても過言ではありません。そして「人は人によってしか磨かれない。」これは私が青年会議所で学んだ事です。一人の人間が変われば、その影響は家族や同じ会社の仲間や関わる全ての人々に波及していき、更にその子世代、孫世代の事を考えれば、その影響力は無限の可能性を秘めていると言えます。だからこそ、私たちは自身の為に、そして社会の為に「社会課題を解決するリーダーを育てる」厚木青年会議所の会員数を増やさなければなりません。
会員拡大には、2つの拡大があると考えます。一つは、新入会員を増やす「攻めの拡大」です。もう一つは、退会者を増やさない「守りの拡大」です。これまで、拡大と言ったときに、新入会員を増やすことに焦点があたりがちでしたが、会員数を増やすためには、「攻め」と「守り」の両方に力を入れることが重要です。
一つ目の「攻めの拡大」に関しては、理事や拡大担当者だけでなく、全メンバーに対して拡大意識の醸成を図りつつ、人対人で入会を働きかける「地上戦」のみならず、企業等に対する入会案内の送付などの「空中戦」、ホームページやSNS等によるプロモーションなどの「ネット戦」を有機的に組み合わせた戦略的な拡大活動を通じて、例会等のオブザーバー、そして新入会員を拡大していきます。
二つ目の「守りの拡大」に関しては、新しい仲間の夢や希望を聞き、その想いを実現出来るように共に伴走していくことが必要です。また、仕事や家庭が忙しかったり、JC活動に対するモチベーションが下がってあまり顔を出さなくなってしまったメンバーには、例えばメンター制度を再構築するなど、しっかりと事情を聞き、寄り添い、退会者を増やさない仕組みを構築し、実行していきます。
「厚木青年会議所は100名限定だから誰かが退会するか卒業するまでお待ちください」、そう言える未来になるよう取り組んでいきます。
【奇跡への軌跡】(ブロック大会特別委員会)
2014年、神奈川中の青年会議所のメンバーや市民が集い、公益社団法人日本青年会議所関東地区神奈川ブロック協議会最大の運動の発信の場であるブロック大会が厚木で開催されました。新入会員の私にはその意味も意義もわかりませんでした。しかし、関わる人の熱量に圧倒され、とにかく青年会議所というのは凄いんだなと心から思いました。そのブロック大会が11年振りに厚木へ帰ってきます。今なら分かります。この地域の魅力を最大限に発信する為に仲間と喧々諤々と議論を重ね、神奈川ブロック協議会、市民、行政、企業、各種団体との協働により、開催に向かうそのプロセスこそ学びに溢れ、私たちを大きく成長させてくれるのです。
今、前回ブロック大会が厚木で開催されたときに在籍していたメンバーは、ほぼいません。しかしながら、鮎まつりへの参画等の事業における経験などを統合することで、イノベーションを起こせると信じています。私たちは、自然と都市と様々な文化が融合され、住まう人の価値観を大切にする理想のまちを想像する事で、時空を超えて、そのような地域を創造していきます。そして、伝統を引き継ぎながらも唯一無二のブロック大会を開催し、新しい歴史を作っていきます。
【未来を見つめ、今を変えよう】(まちづくり)
厚木市・愛川町・清川村は、人口減少や高齢化など大きな社会構造の転換期にあります。転換期という意味では、明治維新の時代に近しいと思われます。他方で、明治維新の時代は、黒船というわかりやすいアイコン(脅威)がありましたが、現代の変化はわかりにくいといった違いがあります。例えば、人口が減少していっても、数カ月や数年の単位では、市民の生活は大きく変化しません。創意工夫を凝らして、市民に対して、よりわかりやすく、直感的に課題や変化を伝えることができれば、市民が危機感を持ち、明治維新の元勲のような若者が現れたり、有権者の投票行動を変えるなどし、社会をより良い方向へと変えていくことができるのではないでしょうか。そこで、三市町村例会を2回開催し、1回目では人口減少等の課題がこれから10年から20年の間に、具体的にどのような影響を市民生活に及ぼすのか調査、研究をし、2回目では、その検討結果を小学生でもわかるぐらいの伝わりやすい伝達方法により、より多くの市民に対して発表する例会を開催します。
また、2025年は、参議院の任期満了に伴う選挙があります。厚木市のみならず、多くの地域で、地方選挙や国政選挙などの投票率の低下が問題となっています。投票率の低下によって、若い世代の投票率が高齢者に比べて低く、高齢者向けの施策が優遇されるシルバーデモクラシーといった状態や組織票を有する特定の団体などの声が優遇されやすくなる状態を招いてしまいます。そこで、投票率向上のための事業を検討し、実施することで、有権者が適切な候補者や政党に投票できるようにするとともに、投票率を向上させます。
そして、厚木青年会議所では、鮎まつりへの参画を通じて、子どもたちを笑顔にすることや厚木青年会議所の存在を広く知ってもらうことを目的として、継続した事業を行っていました。そのような、厚木・愛川・清川の魅力、社会背景およびこれまでの厚木青年会議所の取組みを踏まえて、文化・芸術を軸に、子どもたちを希望に満ちた心からの笑顔にするとともに、文化・芸術の新たな魅力を創出し、また賑わい創出などの街の活性化することを目的として本年度もDREAMフェスタを実施します。
【運動の最大化】(総務)
公益法人は公益目的事業を行う法人として、行政庁の認定を受けた法人が、始めて公益法人を名乗ることができ、法律や定款はもちろん、総会、理事会の運営、適切な財務、コンプライアンスチェック、これらのことを理解し、適切に遂行されなければ、組織として成り立つことができず、運動を展開することが出来ないので「組織運営におけるガバナンス」が必須です。
また、青年会議所は会議所という名の通り、総会や理事会といった会議が基盤となり、運動を生み出し、社会へ展開しています。見方を変えれば、そこで行われる会議の質こそが社会を良くする力の根源であるとも言え、全体の運動を最大化する役割を担っています。従って、その質を向上させる為にあらゆる手段を模索し試していきます。
さらに、厚木青年会議所は、40歳までの年齢制限があり、また単年度制を採用しているため、企業や自治体などの組織と異なり、メンバーや理事が頻繁に入れ替わっていきます。このことは、組織経営の側面からみると、組織の新陳代謝が促されるというメリットがある一方で、経験やノウハウ、知識などが蓄積・継承されにくいといったデメリットがあります。例えば、新入会員セミナー等の各種メンバー向けのセミナーで発表された資料やJCフェスタ等の事業を進める過程で作成した資料やデータなど、報告議案に添付されず、メンバー個人から引き継がれないものもあります。そこで、組織が持つ情報・知識と、個人が持っているノウハウや経験などの知的資産を共有し、創造的な仕事につなげることを目指す経営管理手法である「ナレッジマネジメント」の仕組みを構築、実践することで、「進化し続ける組織」を目指します。「ナレッジマネジメント」にあたっては、情報を共有するクラウドサービスなどのツールの活用も念頭に置きながら、仕組みの構築・実践をしていきます。
【あなたに届けたい】(広報)
今の時代に求められる広報活動とは何でしょうか。まず、広報活動においては、厚木青年会議所のイメージを向上させ(ブランディング)、事業に参加してくれる人や関係者、拡大対象者によりよいイメージを持ってもらうことが必要です。また、SNSなど人々が容易につながれるコミュニケーションツールが普及した今、効果的かつ効率的に広報を行うためには、人々の共感を呼び、他団体と協働しながら情報が拡散されていくことが必要です。これまでの広報活動を踏襲しつつ、厚木青年会議所のブランドイメージを向上し、より多くの人々の共感を呼べるよう、広報活動を行ってまいります。
一方で一つのSNS投稿が良くも悪くも社会に大きな影響を与える時代だからこそ、広報活動においては投稿内容のチェック体制を整えることが必要不可欠です。広報マニュアルを作成し、管理体制と責任を明確にしながらもタイムリーな発信を心掛けていきます。
他方で単年度制の弊害でもありますが、毎年変わる広報計画では継続的に結果を出し続ける事は出来ません。そこで本年度は広報の効果を上げる為に、ターゲットを絞り、中期ビジョンと中期計画を策定します。全子育て世帯に対しては厚木青年会議所の事業や生活するために有益な情報等が行き届き、拡大対象者に対しては青年会議所の活動はもちろん、青年経済人にとって有益な情報を発信します。地域に住まう人々に希望の光を届けていきましょう。
【大海に出れば鯨に出会う】(渉外・出向)
青年会議所は100を超える国が加盟し、17万人以上の同志が世界におり、全国には600を超える青年会議所と3万人近い同志が各地域で運動を展開しています。そして各地から同志が集まるブロック事業や国内外で開催される各種大会への参加することで、多くの人と出会い、その出会いの一つ一つこそが我々に発展と成長の機会を与えてくれるのです。又、本年はブロック大会厚木大会が開催されます。このブロック大会を盛大に開催する為には神奈川ブロック協議会、そして県内20会員会議所の協力が必要不可欠です。何かして欲しいとお願いしているだけでは他人からの協力は得る事が出来ないと私は考えます。私たちから率先して神奈川ブロック協議会の運動に参画し、県内20会員会議所の運動に協力する事で、ブロック大会厚木大会成功の機運が醸成されていくのではないでしょうか。そしてそれは青年会議所内に留まらず、地域社会においても同じです。特に災害等の有事における復興支援を含む防災活動を積極的に行う事は地域社会から共感、共鳴を呼び、大きな運動への原動力になっていきます。
「大海に出れば鯨に出会う。」これは私が学生時代に恩師から頂いた言葉ですが、その言葉を胸に様々な機会に参加し、多くの鯨に出会ってきました。大海へ皆で出航しよう。自身が大きな鯨になる日まで。
【結びに】
27歳で厚木青年会議所に入会した私には大きなカッコいい背中が沢山ありました。その背中に追いつきたい一心で無我夢中で歩んできた10年間でした。今の私は自身が憧れていたような背中を見せる事が出来ているかは分かりません。それでも、そんな背中を見せたい、次の若い世代の厚木青年会議所がもっと素晴らしい組織になっていて欲しいという想いに1点の曇りもありません。
皆様は厚木と聞くと何を思い浮かべますか。この地域を離れるほど、厚木基地という回答が多い気がします。1946年、マッカーサーが厚木基地に降り立ち、そこから戦後日本が始まりました。「Japan as number one」と言われるまでになった日本ですが、失われた30年に突入し、多くのリーダーが明るいビジョンを示すことが出来ません。それならば次の30年は輝く30年にしたい。本年、厚木市は市政70周年を迎えます。30年後の市政100周年を迎えた際、2025年が分岐点だったと言われるように。私たちだったらやれる。新しい時代を築く事が出来ると私は信じております。このまちから始めよう。若者が希望を持てる社会へ。そしてその運動は共感共鳴を生み、神奈川へ、そして日本へ伝播していく。「至誠天に通ず」皆で共に歩いて行こう。
公益社団法人 厚木青年会議所 2025年度
第57代理事長 木村 惇